Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「緑川さん?柏木です。


さっきは突然申し訳ございませんでした」


瑠華は相変わらず淡々としたリズムでそつがない口ぶりで受け答えしている。


「――――ええ、構いませんよ。私昨日のメールが気になって、緑川さんがどうされてるのか気になりまして」


瑠華が受け答えしていうと、


「……え、体調が??―――そうですか、お大事になさってください。


いえ、私のことはお気になさらず」


瑠華は二言、三言会話を交わして「お大事にしてくださいね」ともう一度言い添え通話を切った。


「緑川さん、体調を崩されてるようです。


声も元気がなかったし、ちょっと心配じゃないですか?」


瑠華が心配そうに眉を下げ


そう聞かれても……俺は緑川の体調がどんなか分からないし。


あいつが体調悪いなんて、想像できねぇ。


また仮病じゃないの??


ほら、以前仮病使って有休とってたし。(※Fahrenheit -華氏 参照)


大体あいつが調子悪くなるのはオトコが絡んでるときだ。


まぁ昨日はちょっと疲れてそうってのもあったけど。


てか花金だってのに残業してたから雨が降るかと思いきや、空はぴーかん。


せっかくのデートだから晴れてくれて良かったが。


「今は気にしないとこう」


今は瑠華と二人きりの甘い(?)時間をしっかり味わいたい。


愛で腹は膨れないけれど、気持ちは満たされる。


そんな俺の気持ちとは反対に、瑠華は不安なのか閉じた携帯をじっと見つめている。


………



「分かった、分かった。


俺があいつの様子ちらっと見に行ってくるよ。


でも部屋には入らないからね」


そう提案すると瑠華もほっとしたように頬を緩めた。


瑠華の笑顔を見れて嬉しいけど、その反面…



くっそ、



シロアリ緑川めっ!!



いっつも俺たちの甘い時間を邪魔しやがって!!






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