Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「分からないわけないけど?」
俺は緑川の肩をぽんぽんと軽くたたいて、顔をそらした。
俺だって―――瑠華のことを何度も諦めようとした。
何度も諦めかけた。
女に関しては百戦錬磨のこの、お・れ、が!!
望み薄い女なんてすぐにやめて、手っ取り早い女と関係を持てば良かったのに…
てか振り向いてもくれない女なんて俺には必要ないし、
諦めるとか言っちゃうあたりどうなのかと思ったけど、
でも、
みっともなく彼女の前で足掻いていたのは
俺が
どうしようもなく彼女を好きだからだ。
今までのいい加減な遊び感覚の気持ちじゃなく
彼女に抱く気持ちがホンモノだったから。
俺はダイヤの原石を手に入れたんだ。
最初は道に転がっている石の一つだったけれど、それは磨けば磨くほど美しく
日を追うごとに愛しく
やがてキラキラと輝きはじめる。
そんなダイヤの原石を緑川も見つけたんだろう。
若い男に、まるで道端に転がすように捨てられた緑川は
オトコは顔と金、と豪語してダイヤを探すのさえ諦めていた。
でも
その後、ホンモノの恋に出会った。
それは俺にはホンモノかどうかは見分けがつかないが、
もしかして…いや、かなりの確立で精巧に作られたイミテーションだったとしても
そのイミテーションを愛する彼女を、俺は可愛いと思ってしまった。
だって緑川、
お前
今、ダイヤモンドのように輝いている。