Fahrenheit -華氏- Ⅱ



人事部にコネ―――??


なるほど、ね。こいつが誰かれ構わず人懐っこいのはその笑顔の下で常に情報収集してるからだ。


可愛い顔してやることえげつないな。


「葉月、こんなところに居たら風邪が悪化しちゃうよ?


ほら、中に入ろうよ」


ついでに女心を掴むのがうまい。


二村は緑川をスマートな仕草で立たせて、強引でない程度にエントランスに促す。


二村がさも緑川を心配しているような顔をして、緑川も「…うん」と頬を染めて立ち上がった。





騙されるな緑川。




こいつは悪魔に魂を売った男だ。






その一言が言い出せない俺。


「風邪ひいてるとは知らずにごめんな、緑川サン。


まぁ、かつては同じ部署で働いてた仲だし??俺としても心配だったわけよ」


俺は似非くさいと分かりきっている笑顔を浮かべ、わざと二村に笑いかけた。


「女心を掴むのがうまいですね、部長♪


やっぱ真似できないなぁ」


二村も俺と同じように似非くさい笑顔を浮かべて、緑川の前でさも俺を慕っていると言う姿を装っている。


その化けの皮を外してやるよ。






いつか、必ずな―――









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