Fahrenheit -華氏- Ⅱ

* Side Ruka *




その頃、瑠華は


おっしゃれ~なイタリアンでパスタでもなく、可愛いカフェでバゲットサンドでも食べているわけではありませんでした(笑)


.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.



「牛丼並!お待たせいたしました~!」


アルバイトらしき学生風の女の子が元気よく言ってあたしの前に牛丼の丼が置かれる。


裏道に入った場所に位置する牛丼屋さんは、お昼の時間帯から逸れているにも関わらずに賑わっている。


そのほとんどの客が中年のおじさんだったり、学生っぽい男の子だったりする。


「びっくりしたわ、まさか柏木さんが牛丼食べたいって」


隣で綾子さんがお冷に口を付けながら苦笑。


「ちょっとイライラしててたくさん食べたい気分だったので。


すみませんお付き合いしていただいて」


「いいのよ、私だって好きだし♪牛丼」


あたしは割り箸を割ると、綾子さんも割り箸を割った。


「いただきます」


「紅生姜をたくさん入れるとおいしくなるわよ~」


と、綾子さんは手馴れた仕草で紅生姜のポットからトングを使ってあたしの丼に入れてくれる。


「あたし、はじめてで。


行きたいってずっと思ってたんですけど、女一人で入りづらくて」


「分かるわ~、私も最初そうだったけど慣れたら別に平気♪


夜遅くまでやってるから便利なのよね~。


啓人とは行かないの?あいつも好きよ」


綾子さんは一杯五百円にも満たない牛丼を、これまた優雅に口に運びながら聞いてきた。


「啓とは行ったことがありません」


「何あいつー、セレブ気取り??」


綾子さんは忌々しそうに顔を歪めて


「あ、味噌汁頼むの忘れた。すみませーん!お味噌汁二つ追加で~」


とまたも手馴れた様子で注文。


「「ありがとうございます!味噌汁二丁追加~」」


カウンターの中から元気な声が聞こえてきて、こうゆうのも楽しい


そう思った。






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