Fahrenheit -華氏- Ⅱ
“真咲”―――
“彼”のプライベート用の携帯にその名を見たとき、マックスのクレジットカードの請求書を見つけたときと同じ
絶望的な気持ちになった。
目の前が
真っ暗になった。
そんな言葉が当てはまる。
分かっていた―――
傷つきたくないからもう恋はしない
そう決めていたのに、自ら棘の道へと進んだあたしが悪いのだ。
くらり
眩暈を覚えた。
貧血に似た感覚で地面が揺れている。
まっすぐ歩こうとしているはずなのに、ふらふらとつま先が定まらない。
「柏木さん!」
またも両腕を支えられあたしが顔を上げると
「やっぱり具合悪いんでしょ!?ちょっと休憩しましょう」
綾子さんはこっちが驚くほどの真剣な顔つきであたしの腕を引っ張ると、歩き出した。