Fahrenheit -華氏- Ⅱ
約束の16時をちょっと前にして、突如ケータイの音が鳴った。
TRRR
機械音は、テレビもつけてなければBGMも無い部屋に無機質に響いた。
(てか裕二と『二人きり』でBGMとか有り得ねぇし!)
二人揃ってビクゥ!と肩を震わせる。
思わず裕二と顔を見合わせ……(って言うかこいつと顔を見合わせたくねぇっつの!)でもそうすることしかできない俺ら。ホント……情けねぇな。
最初は裕二のケータイが鳴ったのか、あのストーカー女から『着いたよ』コールが来たのかと構えたが、裕二は自身のケータイに目をやり、ついでゆるゆると顏を横に振った。
と言うことは俺??
もしかして瑠華かもしれない。なんて淡い希望(?)←この場合、何の希望だよ、って突っ込みたくなるが、どんな些細なことでもいい。瑠華からの連絡なら秒速で取れる!とさえ自信のあった俺が
“着信:綾子”
ディスプレイに走るこの文字を見て、硬直した。
俺は思わず裕二を見た。今更綾子から個人的に連絡が来ようと動揺なんてしない。四年と言う間同期をやってたし、個人的な付き合いだってある。
でも、今は何だか不吉な予感て言うのが払拭できず、思わずケータイを裕二に見せる。
「綾子……」
裕二が自身の女の名前を呟き、一瞬全ての計画がバレたのかとひやりとしたが、それだったら俺に、ではなく裕二に直接問い詰めるだろう。あいつはそうゆう女だ。
しかも瑠華が迂闊にこの計画のことを喋るとは思えない。そりゃ嫌々引き受けてくれた……って言うか引き受けさせたって言うかね……半ば強引に頼みこんだ俺が悪いんだけど、でも瑠華はこうと決めたことを曲げることはない。
一本芯が通った
そんな女だ、瑠華は―――
じゃぁ何で―――………?