Fahrenheit -華氏- Ⅱ


俺はぐっと詰まって、ちょっとだけ身を引いた。


「あ…あのさ…、そのオーランドから求婚されたらお前どうする?」


俺はそろりと綾子を見た。


「キューコン?」


「球根じゃねぇぞ!プロポーズの方」


「分かってるわよ。もちろん♪即OK☆」


「おいっ!!!」


裕二が勢い込む。


「…………やっぱ、そーだよなぁ」


あんなイケメンに情熱的にプロポーズされたら、女はコロっといくよなぁ。


ニューヨークで瑠華が何をするのか、誰に会うのか分からない。


家族、友達…





マックスと会わないなんて確証はどこにもない。





俺は丁度上着の内ポケットら辺を押さえた。


その中に瑠華のロングアイランドが入っている。


心臓の辺り…


瑠華の時間が俺の心音とシンクロしている。


でもその時間の差が、俺たちの距離を物語っていて



苦しいんだ。







「どうしたのさ、啓人。柏木さんがオーランドにプロポーズでもされてるの?」


桐島が不思議そうに首を傾け、俺を覗き込んできた。


「いや本人じゃなく、似てるってこと…」


って言いかけてはっ!となった。






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