Fahrenheit -華氏- Ⅱ
今は怒りの矛先が『俺に―――』……
「ねぇ裕二!この人に何か弱み握られたんでしょう!!見るからに陰険そうだもの!」
おい、女ぁあああああ!!
プツン
俺の中で何かがキレたのは言うまでもない。
だぁれぇがっ!!『陰険』だっ!!!
こんな見るからに爽やかでイケメンで(←自分で言う?)害の無さそう(?)な男を目の前にして!(作者からの色々な突っ込みが入ったが)てか、女に関しては百戦錬磨な俺を目の前にして言う台詞か!?
俺が無言で立ち上がったのを機に
「け、啓人!ちょっとこっち来いっ!」
裕二に耳たぶ引っ張られて「いでっ!」と喚き声を上げながらも、俺は裕二に連れられるままキッチンに移動。
「お前の気持ちはよぉく分かる!『陰険』て言われて腹が立つ気持ちもな」
一度と言わず二度も他人の口から『陰険』呼ばわりされて、俺はもう爆発寸前。
だが落ち着け啓人。俺はあんな小娘に『陰険』呼ばわりされて黙って居られる程大人……じゃない。
「反撃してやる!絶対ぎゃふんと言わせてやるからな!」
「ぎゃふんって死語じゃん!てかどーするつもりだよ!
頼むよ!ここであの女に帰ってもらわないと、俺一生綾子を呼べねぇ」
「任せろ裕二。あの女は点けちゃいけない俺の芯に油をぶっ放った女だ。
俺が何とか追い払う。
俺の沽券に関わることだからな!」
「そんなに嫌だったんだな……『陰険』呼ばわりされたことが……」
裕二が大真面目に頷いて、俺から手を離す。
当たり前だろが!
村木じゃあるまいし、あいつと一緒にされたことだけがどうしても許せねぇんだよ!