Fahrenheit -華氏- Ⅱ


品の良いこげ茶のブランドもののキーホルダーが付けられた鍵は、無機質なフローリングに良く響いた。


瑠華が慌ててそれを拾い上げ、後ろに隠した。


「誰……?」


当然ながら今度はストーカー女の方で。


綾子と……隣に並んだ瑠華の姿を怪訝そうに見上げている。


だがすぐに事情を察知したのだろう。




「裕二の……ホントの




恋人?」





女の第六感ってのは何でこーゆうときに、しかも的確に当たるのかな。


いかにも仲良くしてますアピールまでしたのに、俺を恋人として絶対に認めなかったストーカー女。なのに綾子のことは本当の恋人だとすぐに見抜いた。


「ホント……?恋人……?


どうゆう…こと?」


乗り込んできたくせに、イマイチ事情が掴めていないのか綾子が口の中で復唱して額に手を置く。


まぁ戸惑うのは分かる。裕二も俺も、更には瑠華まで―――綾子には嘘をついてて、独りだけ状況を呑み込めないってのもな。


くそっ!どうすればいいのか!


短い間で考えていると、突如瑠華が手を挙げた。





「あの、何か勘違いなさっておいでですけど、麻野さ……いいえ、裕二さんの恋人、


私ですから」






瑠華が名乗り出て、土壇場に来てのこのアドリブには


流石の裕二や綾子も目を点にして、俺に至っては開いた口が塞がらない。


瑠華っ!!!





何てことを――――!!!!





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