Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「ツケ……ってどうゆう……こと…?」
ストーカー女が声を震わせる。両手で塞いだ口から嗚咽さえ漏れてくる。
ここに来てようやく事態を少しだけ把握したようだ。
裕二は覚悟を決めた
と言った感じで額に掛かった前髪をぐしゃりと掻き揚げ
「俺はただ
―――大切な人を守りたかっただけだ」
そう一言呟いた。
俺だってそうだ。
ただ、大切な人を―――
柏木 瑠華を守りたいだけだ。
裕二が招いた事態を瑠華が背負うのは道理に適ってないし、背負い込む義理もない。
「つまりあんたはこのどーしよーもない男に弄ばれただけってこと。
一晩だけの関係だよ。それに嘘偽りはない」
俺の言葉なんて今更この女に効力をもたらせるかどうか謎だったが、女は涙の溜まった目を目一杯開いて裕二を…
ただ、裕二を見つめる。
偽りだらけのこの状況で、真実言えることは
この女は本当に裕二のことを
好いていたのだ。