Fahrenheit -華氏- Ⅱ
しんと静まり返った妙な空間の中、俺は瑠華へと足のつま先を向けた。
「帰ろ。あとはあいつらが何とかするだろ」と言う意味で瑠華の手を取ろうとしたが、
その手は聞き覚えのある着信メロディによって阻まれた。
~♪
ムーンリバー
瑠華のケータイに着信を報せるメロディが流れて、瑠華はケータイのサブディスプレイを見て目を開いた。
瑠華に動揺を与える人物が誰なのか、言わなくても分かる……筈
「心音からです」
……だったけど!
想像してなかった!!!!
「え!!心音ちゃん!?」
マックスじゃなかったことにちょっとほっとしたものの、すぐさま違う焦りが発生。
何で!?今頃飛行機の中じゃ!!?
思いっきり動揺して慌ててタグ・ホイヤーに目を落とすと時間は17:37となっていて俺は額に手を当てた。
瑠華は確か
『心音はブリティッシュエアの4605便に乗るつもりです。成田への到着時間は明日の16時25分。
大抵遅れるので30分~1時間誤差を見ておいてください』
て言ってた。
誤差を計算しても、流石に空港に着いてるな。
「ココネ……て誰よ。“また”違う女?」と綾子が思いっきり不審そうに俺にガン飛ばす。
「ちげぇって!」まぁ女には変わりないが。
「心音は私の親友です。NYでの」と瑠華が機械的な説明をして、
「へぇ柏木さんて友達居たんだ……」と妙なところで感心している裕二。
おぃ!!!裕二!お前、ふつーに失礼な発言だぞ!!
「とにかく出ないと」俺は瑠華をせっついて、瑠華はぎこちなく電話口に出た。
「Hi.」
次から次へと厄介事がーーー!!
今日は厄日に違いない!!