Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華は日本語と、時折英語を交えて心音ちゃんと電話をしている。
日本語も英語も早口だし、この状況を考慮してか、声を潜めているから内容は分からない。
後に残されたこのびみょーーー過ぎるメンバーたち。自分から『電話に出て』て指示したくせに、早速後悔している俺。
心音ちゃんが来るのは分かり切っていたし、瑠華の言う通り『心音にはしばらく空港に居てもらいます。何せ急だしこちらの都合もあるので、子供じゃないし、いざとなればホテルでもとってもらえば』と言う言葉を優先させるべきだった。
「んで?どーすんのお前」
俺は収集の着かないこの場を何とかまとめたくて、裕二を睨んだ。
元はと言えばこいつが巻いた種だからな!
片や泣きじゃくっている女。片や裕二が浮気をしたと思いこんで目を吊り上げて今にも怒鳴りそうな気の強い女。
言わなくても分かるよな?前者がストーカー女で、後者が綾子だ。
「悪いけど……俺、大切にしたい人が居るから。
本当に
ごめん」
さすがに不憫だと思ったのか、裕二は極力声を押さえて、泣いてるストーカー女の肩に手を置く。
「じゃぁ何で最初からそう言ってくれないのよ!」
女が金切声を挙げて、裕二の手を払う。
それはまぁ……思い込みの激しい女だから本命(綾子)に対して何かしでかすと思ったから言うに言えなかったんだよ。
とは言えない。
「ねぇ…裕二が浮気……じゃなさそうね…この感じ…」
と、ここにきて少し頭が冷えたのか、それとも裕二を知り尽くしてるのか、綾子が突如として小声で俺に聞いてくる。
「最初からそうじゃないって言ってンだろ」
俺は力なく答えた。