Fahrenheit -華氏- Ⅱ




バシンっ!


沈黙が支配するこの空間の中で裕二の頬を打つその渇いた音だけが妙に大きく響いた。


びっ!くりして声も出せない俺。


いや、もっと驚いているのは裕二自身だ。


あまりに突然の出来事で、状況が掴めていないのか打たれた頬を撫でさすりながら呆然と瑠華を見やる。


「これは綾子さんの分」


バシン!


そしてもう一度平手打ちが飛んできて、裕二の頬を直撃。


いっ……たそー……


てか裕二!俺だって瑠華からまだビンタを食らってないってのに、何二回も受けてるんだよ!


って、俺、ここまで来てもどM!!?


「これはそこの彼女の分」


瑠華はストーカー女を見下ろし、最後にもう一度、間を開けず裕二の頬を打った。




「これは、あなたの身勝手な行動で、巻き込んだ



啓の分です」






瑠華―――……





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