Fahrenheit -華氏- Ⅱ
裕二がはっきりと透る声でキッパリと言い切り、言った後で首を項垂れる。
今度こそ、綾子と終わりかもな。
一瞬、そう過った。
綾子にフラらえたら一杯奢るか。とまで考えていたが……
けれど
何か裕二、かっこ悪いところばっかなのに、今この瞬間、お前誰よりも
すっげぇかっこいいよ。
「ホントに……
どうしようもないクズ男だけど
でも
そんなことで嫌いになるわけないでしょう?」
綾子の言葉に裕二が顔を上げ、数秒遅れで俺が綾子の方を見やり瑠華が顔を上げた。
「私が怒ってるのは、どうして私だけ蚊帳の外なの、ってことよ。
裕二が私の事心配してくれてる気持ちは分かるけれど、一緒に
闘わせてよ。
それに柏木さんが私の分まで裕二にビンタしてくれたから、ちょっとスッキリしたって言うのもあるけどね」
綾子は悪戯っ子のようにペロリと舌を出した。
まぁ確かにあのビンタは強烈だったよなー……
以前言った。
それは桐島の結婚式でのスピーチで、桐島とその奥さんマリちゃんに向けた言葉。そして
瑠華に向けた言葉。
苦しみは半分。喜びは二倍
手を取り合って
幸せはすぐ近くにある。
裕二と綾子のバカップルには散々振り回されたし、どうしてこの二人がくっついたのかイマイチ理解できなかったが、
この瞬間、気づいた。
二人の間を繋ぐ確かな『愛』って言うものが存在するってことを―――