Fahrenheit -華氏- Ⅱ
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結局、裕二と綾子は何となくだが仲直りして、「柏木さんもごめんなさいね。裕二のアホな行動に振り回されて、私も柏木さんに酷いこと言っちゃったし」と瑠華との仲も修復したみたいだ。
これにて一件落着!!
『遠山の金さん』じゃないが、俺はお決まりの台詞を心の中で呟いて
さて!次は心音ちゃんだ!
何せ時間がない!と慌てて出て行こうとする俺と瑠華に向かって裕二の言葉が追いかけてくる。
「柏木さん!
本当にありがとう。一つ………
借りができちゃったな」
と、恥ずかしそうに頭の後ろに手をやる。
ホント…瑠華が居なきゃこの場はあんなにうまく収まっていないだろう。
「麻野さん」
瑠華はまたも温度のない瞳を裕二に向けて
「私は心を許した人以外に貸し借りを作るのは好みません。
物にしろ、お金にしろ」
瑠華の言葉に俺は目をパチパチ。
………良かった~
俺、瑠華に気に入ってる映画のDVDとかお互い貸し借りしてるし、綾子に至っては「私はパジャマ貸したわ♪」と。
つまり、裕二だけが心を許されてないってワケか。
くくっ!
ちょっと笑えてきて、声を押し殺していると、裕二は表情を歪めた。
「でも、そうですね―――いずれ
それなりの対価を支払ってもらいます」
瑠華がちょっとだけ……ほんのちょっとだけ口元に淡い笑みを浮かべると、
「お借りしていたものです。返します」と綾子の手に裕二の部屋の合鍵を手渡した。
瑠華は『対価』と言う言葉を使ったが、それは裕二に『貸し』を作った、と言う意味だと捉えていいだろう。
つまり、瑠華は言う程裕二を嫌ってないと言うことだ。
けれど
このとき俺はいずれ裕二が
その“対価”と言うものを支払う日が
そう遠い日でないことを
まだ知らなかった。