Fahrenheit -華氏- Ⅱ
ゆっくりと瑠華の方へ顏を向けると、瑠華がうっすらと微笑を湛えてこちらを見ていた。
「違うよ。独占欲が強いだけー。俺だけが知ってる瑠華情報を他人に知られてたまるかっての」
と、冗談めかして笑うと
くすっ
瑠華は喉の奥で涼しく笑った。
「あなたしか知らないあたしを、あなたはたくさん知っているじゃありませんか。
表面上の経歴や出来事以上に、本当のあたしを知っているのは啓だけです」
瑠華……
「これからたくさん……いいえ、本当にもう数えきれない程色々な面を知っていくのです。
だってあたしたち、『恋人同士』でしょう?」
瑠華がはみかみながらちょっとだけ笑い、自分で言った台詞が恥ずかしかったのかほんのちょっとピンク色に染めた頬をふいと顔を逸らした。
瑠華
瑠華―――
瑠華
何度呼んでも、何度囁いても、足りない。
俺の頭の中に、今まで知らない瑠華のことをいっぱいにして?
他のことなんて何も考えらないぐらい。