Fahrenheit -華氏- Ⅱ


今日は風が強い。少しのよそ見でハンドルが取られる。車体が僅かに傾いたのをはっきりと体で感じて、俺は改めてハンドルを握りしめた。


少し強めにハンドルを握り


「あのサ……さっきさ…」と、敢えて瑠華からの返事を待たず俺が先に話しだした。


何でかなぁ。


瑠華も同じことを考えている気がして。


だからこそ、尚更俺からちゃんと伝えなきゃならない。


瑠華の方も俺が何を言い出すのかある程度予想ついていたのか、敢えて口を挟むことはなかった。





「携帯、見たよね。


“真咲”の名前―――」





はっきりと『真咲』と言う名前を出したときは、流石に声が上擦った。


瑠華は肯定の意味か、ゆっくりと頭をこくりと頷かせた。


またもハンドルが取られ俺は軌道修正にかかる。


車体はまっすぐに向かったが、この先の俺たちの会話で俺たちの未来を





軌道修正できるのだろうか。



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