Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「それが何故今頃、あなたにコンタクトを?」


瑠華がちょっと訝しむように声を低め、


「さぁ、分かんない」


これは正直な気持ちだ。


俺の幸せをぶち壊したい、と言う素振りであったが、何か……違う気もするし。


「てか、アイツ結婚するの。あのセントラル紡績の営業マンで菅井さんって人覚えてる?あの人と」


「え?」


瑠華がちょっと驚いたように肩を震わせたのが気配で分かった。


「彼らは仕事上でのパートナーでもありましたよね」


「まぁ、そうだね。俺らみたいだネ♪」


と付け加えると


「それはどうでもいいんです」


とまたも冷たい一言。て言うかどーでもいいこと??クスン……啓くん悲しい↓↓


とイジけてる場合でもない。


「変と言っちゃ変だけど……


でも、アザールとの取引をどうしても成立させたかったから、俺を利用したんじゃないのかな。最初はね」


「結果、引き合いが掛かっていてポシャったわけですが。


だから再びその恨み言を言いに?」


言って、しかしどこか腑に落ちてないように首をひねった。


「正直、俺にもわっかんねーんだよ。


アイツと再会したのはホントに偶然。セントラル紡績に就職してたことすら知らなかったし。


それで……


あの打ち合わせの後…」


「そう言えば、啓の戻りが遅かったのは確かですね。確か……真咲さんが携帯を忘れて行かれて、それを啓が届けに行ったんですよね」


時系列を確認するかのように瑠華が淡々と聞いてきて、俺は頷くしかできなかった。


ホント……瑠華ちゃんは、良くも悪くも記憶力がいいんだから……


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