Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「ありがたいけど、それはマリちゃんにあげて?」


桐島は「そう?マリはあんまりこうゆうの好きじゃないんだよね」と言ってうさぎを眺める。


ってか桐島。お前妙にぬいぐるみが似合うな。


その持ち方(うさぎの両耳を束ねて掴んでいる)はどうかと思うケド。お前は狩りに行った猟師か。


「生保なんてお前加入してたの?」


裕二がタバコに火を灯しながら、もの珍しそうに桐島の方を見る。


「加入する気はなかったけど、何年か前保険会社で働いてる先輩に頼まれちゃってさ」


ふぅん…


俺は顎に手を当てながら、にやりと笑った。


「その先輩ってのは女とみた」


「まさか!桐島くんに限ってそんなことないわよぉ」と綾子。


綾子は桐島に絶対的な信頼(?)がある。


何故なんだ…同じ男だってのに……


だが、桐島はグラスに口を付け、


「よく分かったね」とさらりと告白。


「うっそ」と綾子は若干ショックを受けたようだが、桐島もやっぱ男だなぁ。


って言うか男なんてそんなもんだ。


「付き合ってたのか?」裕二が興味津々に身を乗り出す。


そういや桐島のそうゆう話ってあんまり聞かないなぁ。マリちゃんとの結婚話も突然浮上してきたわけだし。


「付き合ってない。ただの先輩。高校時代のね」


「へぇ。でも一回ぐらいヤったんじゃね?契約のお礼♪とかなんとか言ってさ♪」


へラッと笑って桐島の肩を叩いたが、


「まさか。啓人じゃあるまいし」


と、当然答えが返ってくる筈………


「…………」


返って……


「…………」桐島は黙りこんだ。





うそ!!?







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