Fahrenheit -華氏- Ⅱ
心音ちゃんは白い大きめシャツ一枚と、ジーンズと言うラフな格好だ。シャワー上がりだからもちろんすっぴんだけど、元が良いのか化粧を落としても美人に変わりない。
黒い長い髪は後ろでゆるく束ねてあって彼女が俺に背を向けたその瞬間、その白いうなじに目がいった。
決して変な目で見てたわけじゃねぇぞ!
心音ちゃんの白くて細いうなじに、どこかで見た模様のタトゥーが彫られていたからだ。
普段は下ろしているだろうし、その場所にタトゥーがあることに気付かなかったが。
「あれ……その模様……瑠華のと……似てる…」
思わず口に出て、心音ちゃんが振り返り俺は慌てて口を覆った。
「模様?」最初心音ちゃんは何を言われてるのか分からないようだったが、すぐに「ああ」と合点がいったように束ねていた髪をゆっくりとほどく。
「瑠華から聞いてない?あたしのこと」
心音ちゃんに聞かれて俺はゆるゆる首を横に振った。瑠華から聞いてるのは心音ちゃんがかなり「破天荒」な性格をしている。と言うことだけだ。
「Amazed.(呆れた)」と言って小さく吐息を吐いて、でも言葉とは裏腹に心音ちゃんはどこか明るく笑った。
「ちょうど良かった。一杯付き合ってよ。最後のアクセサリーを一緒に選んで?」
心音ちゃんは立ち上がり、キッチンを勝手に漁りながら、「あった。これ、いいじゃん」と言ってワインのボトルを一本手にして元居た場所に帰ってくる。
ワインはまだ未開封のもので、いかにも高そうなものだった。
またこの子は勝手に……瑠華に叱られるぞ?とか思ったけど、
「大丈夫、大丈夫!片付けさえちゃんとしとけば文句言わないから瑠華は」とあっけらかん。
まぁ?瑠華とは付き合いが長そうだから、心音ちゃんがそう言うのならそうなんだろうけど。
「アクセサリー?どっか行くの?パーティーとか?」
俺は少しだけ心音ちゃんと距離を離してソファに腰を下ろした。
「Yeah.
Valentineのハロウィンpartyに呼ばれてるの」
ヴァレンタイン―――………!?
って、マックスの――――
「何で
何で、心音ちゃんが―――……?」
至極当たり前な質問だった。