Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「何だよ啓人。そんな隠し玉持ってたなんて一言も言ってなかったぞ~」
と裕二が面白くなさそうに口を尖らせる。
ってか、何故にアナタに全てを言う必要があるのですか??
「何よ~どうせ、また一度関係持った女の子でしょう?」
「ちげぇよ。あれは俺の従兄妹だ」
「従兄妹…へぇ、初耳だ」
だから。何もかも喋る必要ねぇだろが!
俺はジンリッキーのグラスに口をつけ、ちょっと呆れたように目を細めた。
「可愛い顔をしてるが、あいつぁかなりのつわもんだぞ?なんせ中学のとき、クラスメートの男をぶん殴って病院送りにしたぐらいだからな」
「な、なんてバイオレンス…」
裕二が顔を青くする。
「へぇ…そんな風には見えなかったけど」と桐島も驚いていた。
まぁ…見た目だけだったら、普通にいい女んだよなぁ。
ある意味瑠華より、強いかもしれん。
だがしかし、今度の結婚相手ってのがそのぶん殴った相手らしい。どんだけ物好きよ!って突っ込みたくなる。
でもちょっと他人事には思えないんだよな。
苛められるのが快感……
って俺、どM道まっしぐらじゃねぇか!!
あいつから写真を見せてもらったことがあるが、これがかなりイケメンだった。
ちょっとワルそうだったけど、お似合いっちゃお似合いだ。
「結婚に生命保険かぁ」
俺はジンリッキーを一口飲んで吐息をついた。
その繋がりが何だか、生々しい…いや、リアルだな。
でも何かあったときに、家族に残してやれるもの。
どんな世の中も金―――だな。