Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺は背番号51番。
シアトルマリナーズのイチローと同じ番号だ。
イチロー。好きだよ?
瑠華ちゃんが……
これといった男の好みがないのに、イチローの髭には反応していたっけね。
「あの髭ワイルドで、素敵ですよね」
なんて聞いて、俺は自分の顎に触った。と言うものの俺は髭が薄い。
あんな風にかっこよく生えたのならいいのだけど。
まぁどっちみち仕事があるから髭はNGなんだけどね……
益々瑠華ちゃんの好みから遠ざかっていってる気がする、俺…
「よしっ!メンバーも揃ったところでポジション発表!
1番ピッチャーユウキ、2番キャッチャー…」
俺はキャップを直しながら、ぼんやりと聞き流していた。
「4番セカンド、啓人」呼ばれたところで、慌てて顔をあげる。
「は!?無理っすよ。俺レフト希望なんで」へらっと笑って見せるも監督兼、キャプテンの水澤(ミズサワ)さんはにっこり、というかにやりと笑みを浮かべた。
「期待してるぞ4番!」ってな具合で肩を叩かれる。
試合なんて久しぶりだし、あまり球が飛んでこないレフト希望だったのにぃ。
勘弁してよ~
「「「がんばって~!!啓人くぅん♪」」」
とベンチから女性陣の声が飛んでくる。
「相変わらずモテモテだなぁ♪かっこいいところ見せろよ」はっはっは!と豪快に笑う水澤さん。
そこに瑠華が居たのならなぁ、無駄に張り切るのに…
と、まぁ若干失礼な考えを浮かべながらも試合は始まった。
―――ところが!
バッター四番(通常一番球を打てるのが四番です)俺は、みっともなく三振を出し、
すごすごとベンチに帰った。