Fahrenheit -華氏- Ⅱ
ホームランだった。
ボールの行方を追って空に向けた目が太陽の光を受けて眩しい。
あのホームランボールが、海を挟んだ遠くの国にいる瑠華の元へ届かないかな…
なんて、センチなことを考え、俺はバットを投げ出した。
「うぉーーー!!走れ~!」
ベンチが騒がしい。
俺の前にも2人塁に出てたから、これで三点入ることになる。
彼女を思いながら、俺は走り出した。
「啓人!やったな!!」
ベンチに戻ると方々で声が上がり、頭や肩を叩かれた。
「水澤さん♪これで交代はなしね?」なんて水澤さんを見ると、サザン水澤はマイペースに電話中。
しかし、手に握られている携帯を見て俺はびっくり。
それ!俺の携帯ですよね!?
「見ました?啓人の勇士♪」
誰!?誰に電話してるのよ!!
まさかと思うけど…
「今度是非遊びに来てくださいね♪じゃぁ啓人に代わります」
ほいよ、と手渡されて俺は恐る恐る携帯を耳に当てた。
「…も…もしもし?」
『ファンです。サインボールください』
冗談とも、本気ともとれない冷静な声。
やっぱり―――!!
俺は愛しい人の声を聞いて、頭を押さえた。