Fahrenheit -華氏- Ⅱ
『OK.Thanks. I'll be there on October 11th then.The very best to you.(分かりました。それでは10月11日そちらにお伺いいたします。それでは)』
10月11日―――
今日から四日後のことだ。
瑠華がニューヨークに滞在している日。
その日に何があって、誰と会うのか俺は知らされてない。
相手はヴァレンタイン―――?
聞きたいけど、聞けない。
俺と瑠華の間には、まだまだ取り去れない壁が存在している。
過去と秘密。
俺は瑠華のそれらの一部を知ってるけど、全てを把握してるわけじゃないんだ。
前の俺だったら―――
相手の過去や秘密に全く興味がなかった。
深く知るのも面倒だったし、知ったところで俺はどうすることもできない。
それなら最初から知りたくない。
だけど瑠華は別だ。
彼女の全てを知りたいと思うし―――受け入れたいと思う。
だけど彼女の中には未だに俺の立ち入れない場所が存在して
俺はそれを知る術を持たない――――
好きだったら相手の全てを信じられる。
恋愛に置いて絶対的な定義だが、信じる信じない以前の問題で
俺は不安だった。