Fahrenheit -華氏- Ⅱ
そう言えば雰囲気もどことなく…似てる気がする。
美人系なところとか。
申し訳程度にセットされたローテーブルの上は乱雑に散らかっていた。物を手で脇に避けると、心音は紅茶のカップを並べた。
テーブルの上の散らかり具合も同じ。
楽天的な部分も、B型っていう血液型までも。
「今はどんな仕事を?」あたしはパソコンデスクを眺めた。
「つまらないゲームよ。ひたすら敵を銃で撃つの」
「バイオハザードみたいな?」
「ああ、あれね。流行ったわよね。あたしも好きよ。スカッとして♪」
心音は、このゲームプログラマーになる前、ファーレンハイト社で優秀なSE(システムエンジニア)として働いていてくれていた。
ファーレンハイトがヴァレンタインに渡って、彼女は独立したのだ。
だけどファーレンハイトのときよりも、何倍も稼いでるだろう。
「麻野さんとは話が合いそうね」
「誰よ、アサノって?あんたの新しい彼氏?」
心音がカップを両手で包み込んで、目だけであたしを見てきた。
あたしは彼女に微笑を返して、ちょっとだけ首を振った。