Fahrenheit -華氏- Ⅱ


そう言うと思った。だからじゃないけど、あたしは手帳を取り出した。


ルイ・ヴィトンの手帳の最初のページに啓とのツーショット写真が挟んである。


手帳は毎日持ち歩くから、この写真は毎日あたしと一緒。


写真を心音に手渡すと、彼女は興味深そうに目を細めた。


「あら。なかなかのNice guyじゃない。Sexyだわ」


ナイスガイって…


「東洋人独特の色っぽい雰囲気ね。この目はホンモノ?」


「ええ。ホンモノ。彼、クォーターなの」


「四分の一。ふぅん」


心音は小さく頷いて、写真をまじまじと見つめる。


「同じ歳?それとも、もしかしたら年下?」


「まさかの年上。彼は今年で27よ」


心音はあたしの言葉にびっくりしたように目を丸め、そしてメガネのブリッジを直すと、そのメガネの奥の瞳を細めて写真をまじまじと見つめ返した。


「東洋人は幼く見えるってホントね。しばらく日本の男と接点がなかったから、そうゆう概念を忘れてたわ」


心音らしい。


心音も、あたしと同じ24だけど、大人っぽい雰囲気と羨ましいぐらいの色気を持ちえていて、一緒に並ぶと大抵彼女の方があたしより年上に見られる。


姉妹と間違えられるのはしょっちゅうだ。




あの人―――マックスもそうだった。



『Nice to meet you. Are you a younger sister of Coco?(はじめまして。君はココ(心音のこと)の妹?)』



マックスとあたしが最初に交わした言葉が蘇る。






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