Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「寂しい、寂しい」


と連呼して泣きまねをするも、瑠華はマイペースに準備を進めている。


ふぁ、と小さく欠伸までしている始末。


まぁ無理もないか。


昨夜は―――、一晩中……


みなまで言わすな。つまりそうゆうことだ。



「啓のお陰で飛行機の中でぐっすり眠れそう」


チクリと嫌味を言われつつも、俺は彼女にべったり。


準備を整えて部屋を出る時は、朝の5時前だった。


車で一時間ちょっとで成田空港に着けば、6時40分初のJAL777便に乗れる。


約12時間40分程を経てJ・Fケネディ空港に到着する予定だ。


現地時間では朝の6時20分。





部屋を出る前に、俺のダグ・ホイヤーのクロノグラフを彼女に手渡した。


もちろん設定をいじってないから、日本の時間。


不思議そうに首を傾げる瑠華からピンク色をしたフランクミュラー、ロングアイランド(腕時計です)を彼女の腕から抜き取った。


勝手にニューヨークの時間に設定し直し、スーツの胸ポケットに入れる。


「取替えっこしよう♪少しは寂しくないかも」


俺に無理やり手渡された腕時計を眺めながら、瑠華は目を細めた。


「考えが安易ですね」


グサリと一言。


すみませんねぇ、簡単な男で。


そうでもして少しでも瑠華を近くに感じていたいんだよ!(泣)


「でも…あたしは見た目に寄らず、そういうロマンチックなところがある啓が結構好きですけど?」


にこっと微笑まれて、キュン♪と心臓が音を立てた。







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