髪の短い天使
パフォーマンスも、ラストの部分だ。
最初の形で、ポーズをとるのだが、私は踊りをやめてしまった。
なんで……なんで、いるのよ。
観客の中に、ある人を見つけてしまったから。
しばらくして、私は自分が踊りをやめたのに気が付いた。
「ちょっと、美幸大丈夫?」
麗ちゃんが小声で、私に言う。
私は、どうしていいか、わからなかった。
どうしよう。
すると、突然麗ちゃんが言った。
「どうして、あなたはいつも途中でやめてしまうんだ。」
応援団の人たちも、何事かと麗ちゃんを見る。
私は判断する、麗ちゃんのアドリブだ。
「だって、だって私怖いの。踊りきってしまうのが。」
麗ちゃんが私に近づく。
「最後まで踊りきって、また新たにスタートすんじゃないのか?」
私は、下を向く。演技のはずなのに、胸に響く。
「なあ、ジュリエット、一歩前に踏み出さないか?一緒に。さあ、行こう。」
そういって、麗ちゃんは私に手を差し伸べる。