髪の短い天使
変な声が出る。
涙が出る。ゲホゲホと咳をして、やった人を見る。
というか、睨む。
そして、驚く。私のフードを引っ張ったのは、トムさんではなく、遥さんだった。
私が驚いた表情を隠しきれないでいると、遥さんがニッコリと笑った。
「美容院、車で行けば5分もかからないでしょ?麗さん、座って食べなさい。」
私は、黙って座った。
本当に驚いた。遥さんとは、いつも忙しくて、朝起こした時くらいしか、話さない。
血も繋がってないし、トムさんとの新婚生活も、私が邪魔をしてしまった。
「麗さん、どんな時も、食べ物を食べる時は、味わって座って食べるんだよ。」
私は、黙って頷いた。
そして、思い出した。お母さんのことを。
いつも、朝ごはんを作ってくれて、私が寝坊しても、あらあらといって、ただ笑ってるだけの、ちょっと抜けてるお母さんのことを。
ずっと、思い出さなかった。思い出したくなかった。
小学生の私にとって、きょうだいもいなくて、一気に失ってしまった両親。