髪の短い天使
「ちょっと、麗さん遅れるよ?」
遥さんが玄関で叫んでいる。
私は、急いで立ち上がる。そして、トムさんにいった。
「甘えられるときが来たら、甘えるよ。」
苦笑いで言うと、トムさんは、そうか、っと言ってまたテレビに目を戻した。
私は、玄関を出て、遥さんが乗っている車の助手席に乗った。
「亮一と何話してたの?」
運転をしながら、遥さんが聞いてきた。
遥さんの運転する車は、面白いほど滑らかに走る。
寝てしまいそうだ。
「うーんと、これからについて……かな」
なぜ嘘をついたかなんて、私にはわからない。
でも、遥さんにはまだ言わないほうかが、いい気がしたんだと思う。
ふぅーん。と興味なさそうに相づちをうって、遥さんは運転に専念した。
そして、私は、三分遅れで店に着いた。
店員さんは優しい人で、笑って許してくれた。
その代わり、私は、前髪だけを切ってほしいと注文したはずが、店員さんが、絶対に似合うから、と、後ろ髪まで切られてしまった。