髪の短い天使
私は、後ろ髪が若干さみしくなったなと手で触りながら、店を出た。
前髪も綺麗に右わけにされている。
あ、そっか。遥さんに車で送ってもらったから、歩きか……
少々遠いが、私は、歩いて帰ることにした。
歩いている途中に、ある人がガードレールに腰掛けているのを発見した。
誰だろ。
私は、ガードレールに徐々に近づいていき、その人物がわかった。
「あ、えーっと……麗さん?だよね。」
美幸のお兄さんだった。
なんで、こんなところにいるんだ?
私は、どうしていいかわからず、とりあえず挨拶をした。
「こんにちは。」
お兄さんも笑いながら、頭を下げる。
私の中の美幸のお兄さんのイメージは、いいものでは決してなかった。
美幸、何も教えてくれないんだもんな……
「麗さん、美幸から僕のこと聞いた?」
初めて会ったときと、印象が違うと思ったら、お兄さんは私服を着ていた。
初めて会ったときは、どこかわからない制服を着ていた。それに、しゃべり方だ。
今こそ違うが、初めて会ったときは、全部敬語だった。