髪の短い天使
「あの、美幸のお兄さん……」
私が最後まで言い終わる前に、お兄さんが制した。
「おっと、麗さん。僕のことは、幸太郎って呼んでくれる?美幸のお兄さんじゃ長いくて、言いにくいだろう?」
幸太郎さん……
どこにでもいるような、普通なお兄さんなのに、なんで美幸は……
「じゃあ、幸太郎さん。美幸と何かあったんですか?」
美幸という単語を聞いて、幸太郎さんは、若干眉毛を動かした。
「何かって、例えば?」
「美幸、教えてくれないんです。前の学校で、頼って子との間に起きたことも、幸太郎さんが、美幸にやったことも。」
しばらく沈黙が起きる。
やがて、幸太郎さんは苦笑いをしながら私に言う。
「麗さん、何も教えてもらってないの?それに、僕が美幸に何かしたって思っているの?」
確かに、私は、美幸から詳しく聞いたわけじゃない。だから、幸太郎さんが美幸に何かを、やったと決めつけていいわけじゃないんだけど……
でも、どっちにしたって、前の学校で起きたことを、知りたいことにはかわりない。