髪の短い天使
「はい。」
進路希望の紙は、昨日配られた。
高校訪問などに行ってから、書いたりしてもいいので、締め切りはずいぶんあとだ。
「美幸がさ、昨日僕に話したんだけど、普通の私立高校や、公立高校を書くらしいんだ。」
それは、私も書こうとしていることだ。
だけど、それの何がいけないんだろう。
「やっぱり、美幸から何も聞いていない?」
私は、黙って頷く。
「はぁー。麗さん、これ僕から聞いたって黙っててね。また美幸との仲をこじらせたくないんだ。」
そう言って、幸太郎さんは舌を出しておどけていった。
今でこそこんなだけど、つい何ヵ月か前までは、とても仲が悪かった。
私も、苦笑いで頷いた。
「実は、美幸は体育祭の後から、またモデルの仕事を再開したんだ。元々、事務所の方は、いつでも帰ってきていいよ、って言われてたんだけど、美幸はわざわざ事務所の社長さんのところに行って、頭を下げたんだよ。それほど、モデルの仕事には、真剣でいたいみたいなんだ。」