rain×rain【完】
土方さんは薄暗い路地をスタスタと歩く。
私はそれについて行くのに必死だ。
「ほら、ここだ。」
土方さんの声は弾んでいて、勢いよく私の手をグイッとひいた。
「わぁっ…。」
目の前の光景がすごすぎて息を飲む。
そこは…光の世界だった。
駒形提灯に灯がともった山鉾は夏の夜を美しく飾っていた。
鉾からは祇園囃子が流れ、浴衣を着た子供たちが唄う童歌が聴こえてきた。
「祇園祭だ。」
土方さんは「これをお前に見せたかったんだ」とあとから付け足した。
これが祇園祭―…
日本の三大祭りの一つ。
私が初めて見た祇園の山鉾は1864年の7月だった。