ときめきパラノイア
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「はぁぁぁ……」
私は放課後、図書室の本棚の影で深い深いため息をついた。
こんな重いため息、先輩を知ってから初めてだ。
こんな子供っぽい自分、嫌になるよ……。
朝にはチエちゃんにこれ以上ないってくらいお説教を受けた。
意味がわからない、紹介してあげようと思ったのにだとか
あんなチャンスもう二度とないよ、この挙動不審娘、だのなんだの。
でもチエちゃんは最後にニヤッと笑ってこう言った。
「でもまぁ、真柴先輩の印象には残ったかもね」
……残らなくていいよぉ……。
今朝は視界の端に真柴先輩の姿をとらえた途端、
とてつもなく恥ずかしくなってしまった。
昨日の今日で、自転車のスピードをあげて、
自分で、あの一番素敵な瞬間を避けたのだ。
よく考えたら、あのユルい真柴先輩が私のことなんか覚えているはずないし、
覚えていたって『だから何?』てぐらいなものだと思う。
だから気にせずに、1日1日を大切にしなければならないのに。
無駄にしてしまった、1日分のあの素晴らしい一瞬を……。
私のばか、自意識過剰、ガキ!
そう思い悩んで一日中落ち込んでいた。
チャンスを潰したことでもなく、チエちゃんに怒られたのを気に病んでいたわけでもなく、今日の朝の一瞬を自分で駄目にしたことが悔しかった。
貸りていた本を返すためにやってきた静かな図書室で、憂鬱は一層増してくる。