ときめきパラノイア

「先輩はもうすぐいなくなっちゃうんだもん……」


誰もいないのをいいことに、呟いた。


3年生だもん。
何にもしなくてもいなくなっちゃうんだもん……。


高校生のする恋だからと言って、これが一瞬のこととは思わなかった。


考えられないことだけど、
私がもし他の誰を好きになって、
もしかしたら付き合ったりして、
これからそんなことが何度あっても、先輩は私の中でずっと輝き続けると思う。


根拠のない自信。
でも絶対に揺るがない自信。

でもどんなにずっと好きでも、会えなくなってしまうのは寂しい。


だから先輩を見つめる一瞬を大切にしなくちゃいけないのに……。
本棚におでこをくっつけて、また深いため息をついた。

もう帰ろう。
お風呂に入って、好きな小説読んで、眠ろう。

そして明日の朝には、また元気に先輩に心の中であいさつしたい。
私は気を取り直して顔を上げた。
探したい本がある。
この前ここら辺にあるのを見つけたんだ。


指で本棚を追って行って発見する。
一番上の段。
チビの私は台をわざわざ引きずってきて、それを取ろうとした。


「ギ…ギリギリ…届くの…か…?」


台の上で背伸びしても微妙だ。
どうして一般書があんな位置にあるんだろう。


「んんっ……」


あ、届いた、取れると思った瞬間、図書室のドアが開いた。
かなりギリギリの体勢でいた私はその音にびっくりしてバランスを崩す。


「え、あ、わっ、わっ、わぁぁぁっ」


ぐらぐらした拍子に、本棚の真ん中あたりに思いっきり手をついた。
その抵抗も虚しく、とんでもなく騒々しい音を立てて台から転げ落ち、オマケに手をついた段の本が勢い良く私の上に落ちてきた。


………散々だ………。


今時こんなベタな転び方をする子がいるだろうか?
最早どこが痛いのかもわからない。
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