ときめきパラノイア
「痛い……」
ゆっくりと起き上がって、頭を抱えた。
スカートもぐちゃぐちゃだし、
あぁ、こんなに本が散乱して、なんかもう本当にツイてない。
「……大丈夫?」
この惨事の原因になった、さっきドアを開けたらしき人が本を1冊拾い上げた。
あー恥ずかしい、見られてないよね。
赤くなって、顔も見れずに私は消え入りそうな声で座り込んだまま謝った。
無言で本を拾ってくれる。放置されるより逆に恥ずかしい。
「あ、すみません、大丈夫ですから……」
乱れた髪を直しながら顔を上げる。
―――――息が止まるかと、思った。
「あっ……」
黙々と本を拾っては片付けてくれるその人は、
真柴先輩だった。
私は完全に凍りついて、先輩を見上げる。
口は間抜けにぽかんと開けたままで。
「……デコ、赤くなってるけど」
ちらりと私を一瞥した先輩は、呟くようにそう言った。
慌てておでこを隠し、取り乱しているのを全力で隠して本を片付けようとしたけれど、先輩があっと言う間に最後の1冊も手に取ってしまっていた。
「あ、あの、ごめんなさい……」
「で、どれが欲しいの」
「え?」
「どれ?」
抑揚の無い口調。
想像通りのことに嬉しいやら悲しいやらで、
私はおそるおそる取ろうとしていた本を指さした。
先輩は踏み台にちょっと足をかけて、一番上の段のそれをあっさりと手に取る。