ときめきパラノイア
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「ほんっっとに……アンタ、浮かれてるよ」
「え?」
お弁当の時間、私が玉子焼きをしっかりとお箸で掴んだとき、
チエちゃんが呆れたように言った。
「浮かれてる?私?」
「浮かれてるよ、見ててこっちが浮かれてしまいそうなくらいに浮かれてるよ」
「そっかなぁ……」
玉子焼きを口に放り込む。
うーん、今日の玉子焼きはちょっと甘すぎないですか、お母さん。
チエちゃんにだけは、
私があの先輩を好きになってしまったことを言ってある。
もちろん、朝のあの瞬間のことは言ってないけれど……。
あれは私だけの秘密だし、もし言ったとしても
『ストーカーかよ!』なんて言われるのがオチだ。
でもチエちゃんは、私が秘密だよ、と先輩への気持ちをそっと伝えた次の日には、
先輩の名前やらなんやら、あっという間に私に教えてくれた。
特に目立つ存在でもないのに、どうやってそんな簡単にわかったんだろう?