ときめきパラノイア


「つーか、本気だよね、香帆」
「本気ってゆうか……うーん」
「イタイぐらいに本気だよ」
「イタくないってば」


チエちゃんはいつもそうやって私をからかうから、最近少し困っている。

別に何にもしてないのに、
見てるだけなのに、
それの何がいけないんだろう?


「真柴先輩だっけ」
「うん……て、チエちゃんが調べてきたんだよ」
「そんなんあたし関係ないからすぐ忘れるわ」
「あぁ、そう……」
「そんなにカッコイイかぁ?」
「カッコイイよ!」


思わず力が入ってしまって、大きな声になった。
他の女子の子たちが驚いた顔で振り向いた。

チエちゃんがへらへらと笑ってごまかして、私は小さくなってしまう。


「はいはい、カッコイイね。でも真柴先輩ねぇ……なんつーか、マニアックだよねー」
「……そんなことないよ……」


もうチエちゃんにかかると私が恥ずかしい思いするばっかりだ。

でも構わない、先輩が目立つ存在じゃない方がいい。
ここまで私の世界を変えてしまった先輩がどんなに素敵かなんて、
私だけが知っていればいい。


「だってさ、それこそ目立つグループじゃないし、あんまし友達といる所も見かけないし、運動部にも入ってないみたいだし。めちゃくちゃオシャレってわけでもなく普通だし、顔は、まぁ並以上な気もしないでもないけどいや普通じゃん、って感じだし、全体的な雰囲気がなんか暗そうだし」



よくもまぁ人が片想いしている相手をそこまで言えるなというくらい並べ立てて、
チエちゃんは鞄からお菓子を取り出して食べ出した。
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