ときめきパラノイア
真っ黒の少し長めの髪、
真っ黒の瞳。
薄いくちびる。

表情が暗く見えるのは、睫が長いからかなぁ? 


東洋の神秘って、真柴先輩のためにある言葉だと思うと半ば本気でチエちゃんに言ったら、教室中に響き渡るような大きな声で爆笑された。


笑われたのは心外だったけれど、
それくらいの魅力は先輩にはある、ってことなのだ。


たくさんの同年代の人たちが生活しているこの校舎で、
私は先輩だけを見つけて、そして一瞬で恋に落ちた。

片想いという、
絶対に抜け出せないような
この想いの無限のループ。


「ってかさ、声かけてみりゃいいじゃん」

「えっ?」

「だって見てるだけの片想いなんて、高校生にもなって恥ずかしいじゃん。そんなのは中学生で終わりでしょ。女の子に声かけられて嫌な男なんてこの世にはいないよ」

「やだ」

「なんでよー。香帆だったらいきなり告白しても脈あると思うけどなぁ」

「そんなことしたくない。なんか、違う、先輩は、そうゆうのと」

「あーはいはい、『先輩は他とは違うから』ね。そんなこと言って他の人にとられても知らないから」

「………仕方ないもん………。でもきっと先輩がもし付き合うような人はすーーーっごく魅力的な人だと思う」

「わかんないじゃん。胸がデカイってだけで付き合うかもしんないじゃん」

「そんなこと先輩は絶対しないもん!!」


チエちゃんが呆れながら笑う。
あんたねぇ妄想も大概にしなよと言って私の口にクッキーを押し込んだ。
悔しくって私はそのクッキーをむしゃむしゃと一気に食べて、
チエちゃんの手にあったクッキーも取り上げてやった。


「あぁっ、何すんのよっ」

「チエちゃんのばかっ」


ぺろりと食べてしまうと、憎らしげに太るよ、と呟く。
自分のがよっぽどしょっちゅうお菓子ばっかり食べてるくせに。
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