そこに咲くかたち。
「もしもし………。 
あ、ごめん、寝てた。」


寝てた? 

嘘つき。 

「…………はいはい。大丈夫だよ。」


話の見えない言葉が続いた。 

彼女……いや、なおくんいわく『元カノ』なのはたぶん間違いない…。 


でも、この会話じゃ『彼女』なのか『元カノ』なのかは、分からないよ…。 


あたしは聞き耳を立て続けた。


「………ごめんね。やっぱり勉強とバイトがかなりきつくてさ…。………………そんなことないよ。」


あたしはドアに張りついて聞いていた。


「ちゃんとできたよ。教わった通りで。うん。……………………はいはい。また教えに来てね。」



なんだか………


最近ここに来たような感じ……。 




なんか、感じるよ。 


わかるよ………。 




やっぱり『彼女』だ…。 


‘カン’て言えばそれまでだけど……、 

話し方で感じるんだよ…。 





胸が騒めく。 


胸が苦しい。 




『なおくんがあたし以外の女に触れてる。』




そう考えただけで、あたしの胸は張り裂けそうになる。 






イヤだ!! 






あたしが好きって言ったのは嘘なの? 









夕方、ゆいちゃんに言われた言葉を思い出した。 



『みさきさんは、ももちゃんが好きだけど…、なおくんのことも好きなんじゃないですか?』





「……………あたし…。」






なおくんのことも、好きなんだ。 




会えなくなるのは…… 

イヤだ……。 










後から考えれば……、 



そう気付いてしまったこの時に……






結末は決まってしまったんだ。
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