そこに咲くかたち。
あたしは恐る恐る居酒屋の扉を開けた。 

初めて入る店だったから、勝手が分からず緊張する。 
店員がきた。 
「いらっしゃいませ!こんばんは!お客様、何名様ですか?」

「あの…、連れが先に入ってると思うんですけど…。」 

あたしは中を覗いたけど、よっちゃんは見当たらなかった。 
と、言うより、あたしは多分よっちゃんの顔をあんまり覚えてないんだと、気付いた。 


どうしよう……。 


「中に入って、お探しになって構いませんよ。どうぞ。」

店員さんは気を遣って言ってくれたんだと思うけど、この店、席が全部個室っぽくなっているから、探すに、探せない気がする……。あたしは更に困った。 


ももちゃんに電話しようかな。 


そう思ったときだった。 

「アキちゃん?」

遠くの個室から呼ぶ声がした。たぶん……よっちゃんがいた。 

「よっちゃん?」

「久しぶりだね〜!こっちこっち!」

手招きされて、名前を呼ばれて、あたしはそこに行く。 

顔をみて、やっと思い出してきた。 

よっちゃんだ。 


「久しぶり〜〜!!元気だった?」 

「元気元気!暇すぎて無駄に元気!!何飲む?」

「アハハッッ!じゃあ、生中で!」


よっちゃんに会ったのは、もう、2ヶ月くらい前に1回っきり。 

でも、話しやすくて会話には困らなかった。


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