そこに咲くかたち。
なおくんには『今から行くから』とだけメールをしてあたしは家を出た。

『わかった。』

運転中、一言だけのメールが来た。 

絵文字もなく。 
お互いただ一言だけのメッセージ。 
それが今のあたしたち。 
お互い『今から終わる』と、覚悟を決めていた。 


あたしはなおくんのアパートに着き、いつもの場所に車を停めて、部屋まで歩いていった。 

インターホンを押す手が、少し震えた気がした。 

初めてここに来た日と同じような、でも確実に違う緊張を感じる。 

なかなか押せずにいたら、ドアが開いた。 


勢いよく開い………


ゴンッッ!! 

「!!ッッた〜いッッ!」

「えっ!?ごめ…ッッ!愛希ちゃん?!」 

あたしはその場に蹲る。 
勢いよく開いたドアが、あたしの頭を直撃した。 
大きな音と共に、あたしの頭は激痛でフラフラした。 

「ごめんッッ!なんでインター鳴らさないで立ってるのッッ!?」

鳴らせなかったんだよ!

「……ドリフじゃないんだからぁ…、勘弁してよ…。いたた…。」

ドラマにはなれないね、あたしたち。 

顔を見合わせて、笑った。 




あたしは思い出していた。

なおくんといると、いつも楽しいことばっかりだったね……。 


一緒にいた時間は、お互い偽物だったのかもしれないけど… 

なおくんとの関係を後悔したこともあった… 

だけどね、 

あたしがなおくんに救われたのも、事実だから……。 

ももちゃんが好きだった。

でも、


なおくんを好きだった気持ちも、確かにそこにあったんだよ。


ありがとうって 
別れるんだ…………。



今だけ少し……泣くと思うよ。

ごめんね。


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