そこに咲くかたち。
「見た…って……。」

あたしは動揺した。 
なおくんの予想外の言葉に、体の動きが止まる。 

「あの日、最初は知らなかったよ?もちろん。なんか愛希ちゃんすごく、様子が変だったから、家の前で別れた後、原チャで後追い掛けたの。 
それで…、全部見ちゃった。コンビニの前で……全部…。ごめんね。」

いや……
謝ることはない。 
ないけど……

じゃあなおくん……ずっと…自分があたしの『本命』じゃないこと知ってて… 
いてくれたの…? 

「な……なんで? 
なんで何も言わなかったの? 
なんで……あたしといたの…?」 

「愛希ちゃんが好きだったから。」 

なっ 
何言ってんの!? 

好きなら尚更……

いや、そうじゃなくて…

「彼女がいたくせに!?」

「……うん。彼女はいた。大事な人。
でも、愛希ちゃんが好きだった。一緒にいたかった。」

カッとなった。 
腹が立った。 

「なにそれ!!そんなの…… 」

「愛希ちゃんなら…わからない?
オレの気持ち…。」

「…?」

「大事な人は確かにいたけど……、愛希ちゃんが好きな気持ち。愛希ちゃんにカレシがいても…、悔しいけど、………一緒にいたかった……。 
愛希ちゃんなら……わかるよね……?」

あたしは苛立ちが一瞬で治まった。
気付いたから…。 

それは、 
あたしと同じ気持ちだ。 

あたしとなおくんは 
同じだったんだ………。 


なおくんは淋しそうに笑っていた。 



一瞬でも、なおくんを責めた自分が……
恥ずかしい! 
情けない! 
最低!! 









世の中の人何人が…… 
淋しさに打ち勝って 
生きていけるのだろう…。 


あたしも、 
なおくんも、 
……ゆいちゃんも、 




敗者だったから……。


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