そこに咲くかたち。
「みさきさんはなんでこの仕事始めたんですか?」

3人でいた待機室で、くだらない世間話をしながら、ゆいちゃんがあたしに聞いた。 

「え?」
「きっかけ?っていうんですか?なんで風俗始めたのかな?って思って。」

きっかけ? 
………きっかけ……。 
あれ? 

「なんだったっけ?」
「え〜?」

ゆいちゃんもカノンちゃんも「はあ?」って顔をして笑った。 
あたしは考えたけど……
本当に思い出せなかった。 

「じゃあ、ふたりは?」

あたしは笑っていた二人を交互に指差して聞いた。先に答えたのはゆいちゃんだった。

「あたしは……やっぱりお金ほしくて…ですかね?で、友達に誘われて…、なんとなく、好奇心っていうか、興味あったし……。でも、一緒にここに入った友達はすぐ別の店に行っちゃったんですけどね。」 
「別の店?」

あたしが聞くとゆいちゃんは少し難しい表情になった。 

「デリヘル行っちゃったんですよ。本番アリの。お金、更にいいからって。」   
「え〜デリヘルはあたし怖いなぁ…しかも本番って……ムリッ!」

あたしは少し鳥肌が立つような感じがした。 
あたしにとって…、こんな仕事だけど、それでもその中なりに、ギリギリのラインがあったから。

『入れるのは無理。』

そのラインは、どんな客にどれだけ高い金額を言われても、どうしても越えちゃいけないし、越えられないライン。 

唯一、気持ちがあるか、ないかで変わる行為。

「デリヘルって別に怖くないし、給料も高くていいとおもうけどなぁぁ!」

あたしとゆいちゃんのトーンの低い話に、カノンちゃんはニコニコして、テンション高く話してきた。

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