そこに咲くかたち。
あたしはカノンちゃんが置いていったケータイを見ていた。
たくさん保存してある写メは、そのほとんどが、ももちゃんとカノンちゃん、二人で写っているものだった。 
ももちゃんの左側にいるカノンちゃんが左手でシャッターを押している状態のが何枚も続いた。 

そして、あたしは見付けてしまった。 



ももちゃんのアパートで…

あの部屋で… 

あのベッドの上で…… 



体をシーツで隠した、二人の写真………。 


眠っているももちゃんの隣に並んで、カノンちゃんがシャッターを押している…。 



「………ッッ!!」

あたしはケータイを振り上げた。放り投げて、壊してしまいたい。壊れてしまえばいい。 



ケータイは壊せても、事実は何も変わらないのに……。








最悪だよ。 










ガチャッ 
「みさきちゃ〜ん!本指なんだけど、すぐ行ける?」

店長がニコニコしながら待機室に入ってきた。あたしは顔を上げられない。俯いたまま叫ぶ。 

「無理ですッ!!」 
「へッ?」

見てはいないけど、店長がどんな顔をしたのかは想像がついた。 

「み…みさきちゃん?」

店長が近づいてくるのがわかった。あたしはまた叫ぶ。 

「1時間………いや、30分待ってください!!今は無理です!客に着けませんからッッ!! 」 
「………あ、うん。わかった。」


店長はゆっくり出ていった。
客に着けないのは本当だけど…、叫んだのは八つ当りだ。……ただの八つ当たり……。





でも……、
30分待ってなんて言ったけど…、 


30分で何か変わるの?

< 288 / 384 >

この作品をシェア

pagetop