そこに咲くかたち。
店の女の子…、今日出勤してた、ゆいちゃんも、カノンちゃんも、りかちゃんもマオさんも……、
みんなどうしてるかな…、
みんなここにいるんだよね…。 

署内に入ったのは、生まれて初めてだった。

他にない独特の空気が流れているように感じる。…それは、ひんやりしてとても冷たい……、淋しい空気。
それはあたしの不安を倍増させた。

あたしは震えている自分の手で、もう片方の手をギュッと握る。
…目をギュッと閉じる。
…唇をギュッと噛み締める。

泣きたくなかったから…。



しばらく待たされた後、男の人と女の人、二人が部屋に入ってきた。男の方は警察官の制服を着ていた。
女の人はあたしの隣に座り、軽い会釈と「どうも。」という一言だけ。そして店での事を、事細かに聞き始めた。

あそこで、何してたか。
どんな客に着いたか、 
客となにをしたか、 

それはもう、かなり細かくて、正直「そんな事覚えてない。」と、何度も思った。
でもあたしは、ひとつひとつなんとか思い出しながら、正直に話す。 
だってあたしは隠すことはないはずだから、 
違反行為なんてしてない。 

名前、住所、電話番号などを書かされて……





やっと解放された。



意外とあっさりしてることに驚いた。
時間はやっぱり長かった。3、4時間は絞られた気がする。 
でも逮捕される事も、実家に連絡されることもなかった。




荷物を返され、部屋を出ると、廊下の先の長椅子に座る、ゆいちゃんの姿を見つけた。 

「ゆいちゃんッ!!」

あたしはそう叫んで走った。


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