そこに咲くかたち。
車は路肩に停まったまま、時間はすでに深夜1時を回っていた。あたしは何も言わずに、ただずっと話を聞いていた。

「もう、隆也とは終わったの。この仕事で最後って、契約したから…。」
「契約…?……付き合ってたんじゃないの?」
「……あたしは……好きだったんだけどね……。利用されてただけみたい。悔しかった。………でも……、利用してたのは、たぶんあたしもなんだ。」

あたしは気付いた。
カノンちゃんが言う『利用』の意味。

カノンちゃんは… 

「ももちゃんに会いたくて、でも、会えない日ばっかりて……淋しくて…」

「会いたい気持ちを…、違う方向に向けてたんだよね…。でも、誰でもよかったわけじゃない……。」

「みさきちゃん……?」

カノンちゃんは不思議そうな顔であたしを見た。

「わかるょ。」 

あたしはそう言って、笑いかけた。 

そんなあたしを見て、彼女も笑った。 


あたしは気になっていた事を聞いてみた。

「ねぇ…、もも…カレシにどうしてお金なんて渡してたの?」

カノンちゃんはあたしから目線を反らして、答えた。

「最初はね、貸してって言われたの。あたし嬉しかったんだよ。頼ってもらえてるってね。そのうち……、なんか習慣になっちゃって…。」


さ……
サイテー……、
ありえない。

ホントにももちゃんなの?

あたしの知ってるももちゃんとは……なんでこんなに違うんだろう…。


「でも……、昨日は受け取らなかったんだよ。」
「……………」
「なんでだろう…?」


なんだか…


カノンちゃんも
………ももちゃんも…


あたしとは世界が違うんじゃないかな……。




なんだか




あたしには分からない話ばかりだ…。






「みさきちゃん、お願いがあるの…。」


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