そこに咲くかたち。
この部屋では、いつも幸せだった。 

来るたびに、幸せは増え続けた。 

ただ……


一緒にいたかった……。





あたしたちが始まったのはこの部屋。 




きっと…… 





終わるのも…………。 










ももちゃんは黙って立ち上がった。シンクの前で立ち尽くしているあたしに近づく。 

あたしは顔を上げられなかった。 

泣いてるからだけじゃなく…、向きたいのに……、体か言う事を聞かない。 


「好きだから…」 


…え……?

ももちゃんはあたしの手に触れた。 

「別れたくないから……、鍵を渡して、待っててもらった。」 

ももちゃんはあたしの手をギュッと握った。 

「何…言ってんの?」 
「何って…、俺は…」 
「あたし……… 」  

あたしは戸惑った。 
そして色々思い出していた。 


よっちゃんが言った事も、カノンちゃんが話してた事も、 



あたしとももちゃんが一緒にいた時間も……
全部……思い出していた。


「あたし…、知ってるよ?全部聞いたよ?」

「でも、愛希、聞いて…」
「昔だったならいいよ?あたしはそんなの気にしない。でも、違うよね?昨日の夜も会ってたよね?最近まで……まだ不特定多数の女の子と付き合ってたんでしょ!?ねぇ?ももちゃん?」 
「…………確かに、愛希の言う通りだよ。でも、俺は、愛希が好きだから…、もう切ろうと………」 
「いい!もういい!」 


『愛希の言う通り』 

認めた。 


ももちゃんは認めた…。 



信じたかったのに…… 








「もう、信じられないから……。」


< 317 / 384 >

この作品をシェア

pagetop