THE BEST REVENGE
奏梧は降りしきる雨の中、
傘も差さずしばらく人を待った。
やがて雲が暗い灰色に澱み出すと、
街路灯が順を追って点灯し出した。
辺りに光が散りばめられた、
しばらくの後、
奏梧の前に男が現れた。
使い込まれた、
茶色のトランクケースは
雨に濡れてしまい、きっと中が
悲惨なことになっているだろう。

彼の顔は
トランクケースの中身よりも
おそらくよれよれな、
憔悴した表情をしていた。
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